治らない病だってある、でも無問題!

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治らない病だってある、でも無問題!

うつ病は治すことができる病気とされています。一般的には、適切な治療を受けることで1~2年程度の治療で改善すると言われます。しかし、現実には治りにくく、再発を繰り返し、治療が長期化する場合もあります。

一般に、うつ病患者の20~30%が長期化すると言われており、5年以上治療を続けている人もいます(私も罹患してから13年を超えました)。また、約60%が再発し、その多くが回復後2年以内におこると言われています。

また、医療関係者が考える治った状態と一般の人間が考えるそれとの乖離の問題もあります。一般人にとって(つまり多くの患者にとって)、治った状態とは次のような状態をイメージするのではないかと思います。

  1. 抑うつ症状がない
  2. 薬の服用や通院が必要なくなる

1は当たり前というか、わかりやすいイメージで、医療関係者と齟齬はないです。しかし、問題は2。医療関係者は薬を飲んでいても、通院していても、症状がなく落ち着いているならそれは「回復した」と表現するのです。より具体的には、症状がほとんどなくなった状態を「寛解」と呼び、この寛解状態が2ヶ月以上続いた状態を「回復」と表現するのです。

この観点では、私は既に「回復」しており、治ったとも言えます。しかも、「回復」を繰り返しています。どういうことかというと、「回復」状態から抑うつ症状を再び発症することを「再発」と言いますが、「再発」=>「寛解」=>「回復」=>「再発」=>…を繰り返していたからです。

※ さらに「再発」の度に症状は重くなり、「回復」しづらくなり、「再発」しやすくなっていくと言われています。

では、ここで言う「回復」状態を私たち一般の感覚として「治った」と感じられるでしょうか。・・・まぁ、感じられないですよね。また、患者自身がこの解釈を受け入れたとしても、家族や友人、知人、会社の同僚などがイメージする「治った」とは激しく乖離した状態でしょう。

実際、私も周りの人達と何度も次のようなやりとりを経験しています。

知人「体調はどう?うつは治った?」
私「はい、症状は全くないですよ」
知人「良かったね!薬ももう飲んでいないの?」
私「いや、薬は飲んでますね」
知人「な〜んだ、薬、飲んでいるのか。治っていないじゃん

そう、一般人の感覚として、薬を飲み、通院を続けている状態では「治った」とは言えないのです。そして、この一般人の感覚に照らして、うつ病はかなり治りにくい病気だと私は考えています。また、私自身、長らく「回復」状態にはありますが、「治った」とは認識していません。

この「治った」の定義に関する齟齬、乖離がうつ病に関する様々な人間関係のトラブルの元になっているように私は思っているのですが、これに関してはまた別の機会に考えてみたいと思っています。ともかく、「うつ病」は(一般人の判断基準からすると)治りにくい。治っていなくても、つまり、長年にわたって服薬や通院を続けていても特に珍しくはないし、そのこと自体、責める必要のある状態ではないと私は考えています。

私自身は自分の「うつ病」は治らないと考えています。一生付き合っていくものだと受け入れています。しかしながら、医療関係者の表現するところ「回復」状態には長らくあり、今後もおそらくは「再発」せずに生きていけるだろうな、というぼんやりとした自信はあります。

長らく私は抑うつ症状には見舞われていません。「回復」状態を維持しており、日常生活になんら支障のない状態が続いています。薬の服用は続けており、3ヶ月に一度ぐらいの通院も継続しています。そう、服薬と通院を除けば、なんの問題もないのです。

よく、患者本人や家族、周囲の人間が先に挙げた例のように「服薬と通院も辞められる状態にならないと!」と追い込む、または、追い込まれるケースを散見しますが、これは本当に悲しいことだと思います。

いいじゃないですか、薬を飲み続けていても。たまに通院していても。毎日、元気で、身支度や日常生活ができて、働けて、収入があって、楽しく過ごせていたら、いいじゃないですか。薬や通院がそんなに悪いことですか?

ブリーフィングでも書きましたが、これは例えば高血圧の人が薬を飲むことで普通の生活ができるのと全く同じことです。なぜ、「うつ病」ではこの状態ではいけないと判断されるのか。精神医療と完全に手が切れないと治ったとみなされないのか。これは医学というよりは人間の考え方、文化や風習、哲学の領域の問題のように私は感じています。

せっかく「回復」状態にあるのに、このようなこだわりで患者を追い詰めて悪化させるなんてことがあったら(実際、ありますが)、ものすごく勿体無いことです。

治らない病気、治りにくい病気はあります。うつ病も(特に長期化したうつ病は)そうです。でも、それは「回復」しないということではありません。「回復」さえすれば、問題なく日常生活を送れますし、夢を追うことだってできます。そのことをこの連載全体を通して伝えていきたいと思っています。

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