[People Management] 目標管理はしない方がいい

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[People Management] 目標管理はしない方がいい

目標管理をしない方が一番生産性があがる

トム・デマルコ&ティモシー・リスターの名著「ピープルウェア」で語られていることですが、事実だと思います。

これは、エンジニアにマネージャが

  1. エンジニア自身に目標を立てさせる
  2. マネージャが目標を立ててエンジニアに与える
  3. エンジニアとマネージャが一緒に目標を立てる
  4. 目標を立てない

としたときに、最も生産性が高かったのが「4. 目標を立てない」であったという話です。
’ちなみに、一番生産性が低かったのは「2. マネージャが目標を立ててエンジニアに与える」)

会社が目標管理をしたがる動機

会社は不安から目標管理をしたがります。
ペンキを塗るために職人を雇ったのに、レンガ積みが急務だとか言い始めてレンガを積まれては困るので、雇った側の期待通りに動いてもらうために目標、そしてそれに連動した評価を設計して被雇用者に与えます。

このことには会社側(雇用側)にとって幾つかのメリットがあります。

  1. 期待通りの成果が得られる可能性が高まる
  2. 1より計画立てて物事を進められる
  3. 社員に統制を効かせられる(勝手なことはさせないぜ!サボるなんてもってのほか!!)

一見素晴らしいのですが、ここに横たわっている発想は「不信」です。

目標管理が社員に放つメッセージ

目標管理はベースに「不信」があります。どんなに取り繕ってもこれは動かせません。

被雇用者は放っておいたら何をするかわかないし、もっといえば何もしないかもしれない。それでは雇用者は困るのです。払ったコスト分の成果は是が非でも出してもらわなければならない。発想としては、機械や設備の購入と変わりません。しかも、気分にムラがあって生産性に波がある厄介な機械です。機械であるとすれば、ですが。

さて、ここに誤謬があります。それは、先ほど挙げたメリットを逆転させたデメリットを無視してしまうことです。

  1. 期待以上の成果は得られない
  2. 計画を上回る物事の発展はないし、計画が誤っていた場合は爆死する
  3. 勝手なことはさせないため、組織のメンテナンス機構が働かず、組織の自浄作用が死ぬ

つまり、雇用者が全知全能で、常に正しい戦略と計画をたて、人を割り当てられるなら目標管理は有効なのですが、この前提が成り立つことが決してないため(雇用者もヒトなので)、雇用者や雇用者が立てた計画の誤りを調整したり、正したりすることができないことが組織にとって致命傷になるわけです。

何より、目標管理は雇用者からの「私は物事がわかっている。君たち(被雇用者)はわかっていない。だから従いなさい」という裏メッセージを孕んでいるため、被雇用者のモチベーションはダダ下がりです。自分を信用していないというメッセージを放つ相手に対して頑張ろうと思える人間は稀有なため、これは自然なことです。生産性が下がるのは当然と言えるでしょう。

再び結論。目標管理はしない方がいい

組織はピラミッド構造です。フラットな組織など色んなスタイルが提唱されていますがベースはピラミッド構造です。そのこと自体が悪いわけではありません。しかしながら、人間が作り出すありとあらゆるものには欠陥があるという知見を見失うと危険です。それは組織とて例外ではありません。

確かにピラミッド構造は組織を効率的に運営するには欠かせません。しかし、それは効率的に運営するために必要なのであって、正しく効果的に運営するための仕組みではありません。正しさはエラーの検知力とその補正力によって担保されます。TCPがその誤り訂正の仕組みによってインターネットの基盤となっているように、不確かなものを要素にして確かなものを構築するには誤り訂正力が要求されるのです。

私の意見としては、目標管理は組織の誤り訂正力を弱めるのでしない方が良いと思っています。しかしながら、目標管理で食べている人も沢山おりますし、未来が不確かなものであるということを受け入れるにはガッツが足りない人も沢山おります。したがって、精神安定剤的な効用を求めて、ゆるーく目標を立てていくのはいいのかなぁと思ったりもします。何より、雇用者にガッツがあっても、株主が目標を決めないことなど許しませんからね

ともかく、目標管理するにしても真面目にやりすぎないようにしましょう。

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