[People Management] 単純接触効果は馬鹿にできない

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[People Management] 単純接触効果は馬鹿にできない

論理的で理性的である人ほど陥りやすいピットフォールがあります。
それは、正しいことに人は従うという予断です。勘違いといってもいいかもしれません。

相手がコンピュータであれば、正しいことに従うでしょう。というより、正しくないと全く動きません。しかし、人間はそうではない。人間は、想像以上に何を言うかより誰が言うかを重視します。

人間関係が古来より重視されるのは、人間のこの特性が多分に影響しているものと思います。つまり、好感度が先、正しさは後ということです。残念かもしれませんが。そして、この好感度を上げるという面において、単純接触効果はかなり強力な作用をもたらします。

単純接触効果(ザイオンス効果)とは?

単純接触効果はアメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが提唱した心理効果です。

相手に何度も繰り返し接触することによって、だんだん好感度や評価などが高まっていくという効果

引用: ザイオンス効果とは?デキるビジネスパーソンは皆使っている!? | PINTO!

広告、マーケティングの世界では多用される行動心理学の知見ですね。よく知らない無名のブランドより、メディアでよく見聞きするブランドの商品を自然と人は選択してしまうという、アレです。

毎日顔を合わせることの効果

私は稼働日は毎日、自分のチームのメンバーと顔を合わせています。これはうちのチームがスクラムでプロジェクト運営しているため、最初は狙って行ったものではありません。スクラムでは毎日のようにスクラムイベントというイベントが発生し、特にデイリーというイベントは毎日実施されるため、自然に顔を合わせるのです。

このようにスクラムで運営すると(スクラム信奉者ではありませんが)、単純接触効果を自然に活用できるので、チームの立ち上げ期などには特におすすめです。とはいえ、スクラムの運営も奥深いノウハウがある世界なので、スクラムマスターの経験者を招聘してサポートしてもらうのが良いでしょう。

ともかく、なんであれ毎日顔を合わせていると、お互いの深いところはよくわからないままだったとしても、好感度があがっていきます。実際には、少しずつ話していくのでわかってもいくのですが、仮にそれがなかったとしても、親しみが湧いてくるというのは不思議なものです。理解も共感も絶した相手に対しても好感度があがっていく。単純接触効果の最強な部分はここにあると思います。

ここで、好感度があがっていく主語がそれとなく、相手ではなく自分自身になっていることに気づいた方は鋭いです。そう、私が思うに単純接触効果の価値というものは、相手ではなく自分を変化させることにあると考えています。相手の自分に対する好感度があがっていくのではなく(あがっていきますが)、自分の相手に対する好感度があがり、態度がフレンドリーになっていき、結果的に相手からの好感度もあがっていく。そこにこそ価値があると考えています。

従って、メンバーの自分(マネージャ)に対する好感度はともかくとして、自分がメンバーを嫌わないようにするために非常に効果がある方法だということができます。

単純接触が逆効果になる時

単純接触効果では、接触回数が増えるごとに好感度はあがっていくと言われます。しかしながら、世の犯罪を見てお分かりの通り、好感度の高まりにはデメリットがあり、何かで拗れると、逆に恨みや怨嗟、ヘイトの温床になってしまう部分があります。知らない相手に人間は殺意などの攻撃衝動は覚えないものです。知っているが故に、そして、その相手の何かが著しく気に障る。

従って、単純接触効果を活用したい場合には次のことに留意する必要があります。

  1. 誠実であること。相手を自己利益のためだけに利用しようとしないこと。
  2. 有言実行を心がけること。
  3. 相手と約束したらとにかく守ること。やむをえず守れない場合は心から謝ること。

単純接触効果云々とは無関係に基本的に大切な姿勢です。ともかく、こうした姿勢がなければ、あなたを知られれば知られるほどヘイトが溜まっていくリスクを負うことになりますのでご注意ください。嫌な人は知れば知るほど嫌になるという当たり前の話です。

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